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再審が決定した袴田事件

2014年3月28日、証拠捏造が疑われる冤罪事件で静岡地裁が画期的な決定が下され、Twitterなどネットが沸いた。袴田事件の再審請求で再審開始と保釈が決定されたのだ。Twitterで日本の三大冤罪事件に数えられるほど有名な冤罪事件なので詳細は割愛する。ありがたいことに、高知白バイ事件も三大冤罪事件のひとつに数えてくれた方もおり、支持の輪も広がっているなと実感できた。

●まともな裁判官のまともな判断
決定書で、裁判官が「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する状況にあると言わざるを得ない」と極めて強い表現で、冤罪の可能性を放置してきた事を批判した。死刑が確定しても長いあいだ死刑が執行できなかったことは、国家が冤罪の可能性を認識していたと考えられる。にもかかわらず、国家機関が思考停止のまま、ギネスブックに載るほど長期間に渡って袴田氏を拘束してきたことは、刑事司法の理念を踏みにじっていることに他ならない。

真っ当なことをきちんと判断できる裁判官の存在は、まだまだ司法も捨てたもんじゃないかもしれない(苦笑)と期待できるだろう。とはいえ、人によりけりでは困る。当たり前のことが当たり前にできる司法が期待されるのである。

●検察が虚偽証拠で死刑を誘導
袴田事件ズボン
検証で袴田氏がはくことができなかった「証拠」のズボン

袴田事件で再審が決定された新証拠として、犯行時に着用していたとされる血痕が付着したズボンの評価で、血痕のDNAの不一致が挙げられる。検察側は「DNA試料の劣化や他の捜査員のDNSの混入などが考えられる」などとしたが、裁判官は科学的な理由で検察側主張を退けた。

さらに、原審控訴審で証拠とされたズボンが小さすぎ、袴田氏がまったくはけなかった事実がある。その事実について、検察側は、「B」表示のズボンが肥満体用のサイズだったのが味噌漬けになって生地が縮んだなどという虚偽の説明を弄して正当化してきた。ところが「B」表示は色を示すコードであることが分かり、ズボンが縮んだのではなく元々がスリムサイズだったのだ。実は、当初から警察や検察がこの事を分かっていたが、その事実を隠して裁判官の判断を誤らせたという。裁判官が激怒するのも無理はない。

このように、事実に基づかず根拠も無いデタラメを主張し、被告に有利な事実を隠すのは警察・検察のお家芸と言ってもいい。事実をねじ曲げ、無実の人を死刑にしようとするのが国家機関だから驚くほかない。部分的に捉えれば、まるで北朝鮮のようなのである。

●重大証拠の捏造疑惑から再審開始決定
証拠とされたズボンは、1年以上経過してから味噌樽から発見され、以前から証拠捏造の疑いが持たれていた。再審請求の審査で「発見の経緯が不自然で、血痕などの変色状況から、事件直後に隠されたものではない可能性が大きい」と警察の捜査を糾弾している。警察が証拠捏造の疑いがあるとの認定から再審が決定されたと言っていいだろう。

再審が始まれば無罪判決の可能性が高いが、死刑事案における証拠捏造とはコトは重大である。殺人未遂と断じてもいい。検察は決定を不服として即時抗告の構えを見せるのは往生際が悪すぎる。そういう姿勢が冤罪を生み出してきたのではないか。証拠捏造の事実がないか明らかにして、捏造の事実があればきっちり断罪する方が期待されているのだ。

●高知白バイ事件はどうか
ねつ造証拠写真ネガフィルム
事故が起きてから何か月もあとでスリップ痕の写真が出てきた高知白バイ事件

同様に冤罪と証拠捏造が疑われる高知白バイ事件だが、残念ながら袴田事件と状況が違いすぎて類似性がない。ただし、捜査機関が証拠をでっち上げて有罪に持ち込む図式は同じである。また、コトが起きてから何ヶ月も後で重大な証拠がひょっこり出てきたというのも共通点だ。

高知白バイ事件は、タイヤ痕というバスが動いていたことを示す証拠がある一方で、破片などの飛散状況はバスが停止していたことを物語っている。また、タイヤの濃さが変わるという科学的に説明できない事象も未解決である。御用鑑定士は、考えられる液体説を否定できず、タイヤのゴム屑説にすり替えている不自然さがある。警察・検察側で事故の見立てが、三者三様にバラつくというのも証拠の不自然さを伺わせると客観的な証明にもなる。

袴田事件においては、不自然な証拠のズボンを真面目に検証していれば、理不尽な人権侵害に至らなかったと思われる。高知白バイ事件でも、不自然な証拠を徹底的に調べ直す必要があるのではないか?

高知地裁の裁判官は、原審の判決は本当に正しかったのか見直してもらいたいものである。

司法取引?異例すぎる裁判官の提案

ネタとしては古くなったが、裁判官が司法取引とも受け取れる提案を持ちかけてきた。いきさつや内容について、LMさんのブログで公開されているし、高知県外のTV局(KSB)で詳しく報道されているので参照して欲しい。
異例の求釈明
高知白バイ衝突死(28)異例…裁判官が新たな“提案”

●裁判官の新たな提案とは
これは、裁判官が検察や弁護団の主張とも違う「第三の事故形態」が考えられないか?と弁護団に提示してきたというものだ。裁判所が提示してきた「第三の事故形態」とは次のようなものである。
1. 交差点で右折するためバスが道路内へ進む
2. バスが右車線(第二車線)付近まで進んで一時停止
3. 一時停止中のバス前端部に横から白バイが衝突
4. 衝突の衝撃で道路の片勾配(カント)の下りに向かってバスが「滑走」
5. バスの「滑走」によってタイヤ痕が印象された


この「第三の事故形態」をひとことで言うと、2007年ごろにネットの住民が考え、拡散しようとした「横滑り説」に近いものといえる。ただ、横からの力を受けて前方へ滑ることにする所が違う程度である。

横滑り説は「バスが発進しようとした瞬間偶然に白バイが衝突して横滑りした」という調子が良すぎるものだ。裁判官が持ちかけてきた説は、衝突した衝撃でバスが道路の下り勾配を滑り落ち、その際にタイヤ痕が印象されたという点が違う。タイヤ痕の印象メカニズムについては、横滑り説がブレーキを踏んで制動したブレーキ痕。他方の「裁判官説」は、タイヤが止まったまま下り勾配を1.2m滑り落ちてタイヤ痕が印象されたというものだ。両者とも仮説であるがよく似ている。いずれにしても、物理的に可能性がない机上論の域を出ていないのである。

●裁判官が司法取引をもちかけてきた
今回驚いたのは、弁護団が検討も主張もしていない「第三の事故形態」を裁判官が打診してきた点である。弁護団は答えようがないのは当然だろう。この異例の打診内容をよく考えれば「バスが停止しているところに白バイが衝突した」ことになり、再審無罪の可能性が出てくるのではないか?といえる。

裁判官が無罪になる可能性について助け船を出してきたとも受け取れる。裁判官の第三説をとれば、バスが止まっていたことになり再審開始へ展望が開ける。しかし、タイヤ痕ありきが前提となり、ネガ捏造についても主張を取り下げることになる。仮に再審が始まったとしても、従来の主張を取り替えて論戦を戦えるのかという疑問も湧く。

裁判官が第三説で「県警の証拠捏造疑惑を捨てれば再審開始に道を開く可能性があるがどうだ」と、事実上の司法取り引きを持ちかけてきたと見てよいだろう。当然ながら、日本では司法取引が認められていない。再審の審理過程においてこんな話が出るとは、法的にとんでもないことでないか。

次回は「第三の事故形態」について自動車工学の観点から検討する。

破損箇所から衝突が分かる

この記事は、御用鑑定の比較一覧のNo.4「白バイの衝突姿勢」と関連事項の解説である。

●えぐれ傷の高さよりサイドメンバーの高さが50mm低い
直立状態で白バイの左メインフレームのえぐれ傷の高さは、シート座面とほぼ同じ高さである。一体どのくらいの高さになるのか。

白バイ(ホンダBC-RC49型車)のベース車VFR(ホンダBC-RC46型車)のシート高が805mmである。この高さは諸元値と言われる数値で、型式認定書に記載される公式な数値である。ただし、このシート高は接地1G(装備重量の車両で空車状態)で車両が直立した状態で計測される高さである。体重55kgの乗員が乗車した状態(「乗車1G」と呼ばれる)ではサスペンションが沈んでシート高が低くなる。旋回中は横G(正確には求心加速度の縦G成分)を受けてシート高の沈み量がやや多くなる。

白バイ損傷4.

このクラスのロードスポーツバイクのホイールトラベル(タイヤが上下できる範囲)は100~120mm程度であり、走行中はストロークの半分程度までサスペンションが縮んでいると一般的に考えられるため、シート高は805─55=750mm程度となり、その高さが動的なえぐれ傷の高さと考えられる。フレーム幅とタンク幅からも推定すると、白バイの左メインフレームに付いたえぐれ痕の位置は、白バイが直立状態で高さ約750mm、車体中心から150 ~200 mm 左側の範囲にあると考えられる。

白バイ衝突時バンク角

●白バイのえぐれ傷から推定できるバンク角度は35 ~40°
一方で、白バイにえぐれ傷を付けたと見られるバスの強度メンバーは、高さが700mmであることを示す写真がある(1番目の写真右側)。強度メンバーは白バイのえぐれ傷の高さより50mm低い位置にあり、直立姿勢では両方の高さが合わなくなる。ただし、白バイが右にバンクすれば、えぐれ傷の動的な高さとバスのサイドメンバー先端部と同じ700mm の高さになる。その時のバンク角度は35 ~40°の範囲になる。したがって、えぐれ傷の高さから白バイが直立で衝突したことにならず、車体を深く右傾させた姿勢で衝突したといえる。また、水平より上向きの傷は,白バイが倒れてからバスに踏みつけられた傷でもないといえる。

白バイ突き込み角度2

●二輪車のバンク角度は計算で求められる
白バイが衝突した時のバンク角が具体的になると、白バイがどういう軌跡を描いて走行してきたかが推定できる。

事故現場は、半径400 m という高速道路のカーブなみの緩い右カーブで、カーブの内側が低くなるカント角が付けられている。このカント角は、設計速度で走行する車両がハンドルを切らずに直進路と同様に安定して走行できるように設けられる。二輪車の場合は、直線路と同等に路面に対して垂直で走行できる角度となるが、これはカント角がない平坦路における二輪車のバンク角と等しいと見なせる。

二輪バンク角公式

二輪車が旋回するときのバンク角θは、遠心力(求心加速度)、速度および旋回半径と相関関係があり、以下の計算式で表される。
θ= tan-1(ν ²/g γ) 【ν:速度、g:重力加速度、γ:旋回半径】
半径γ=400 m、ν=16.67m/s(60km/h)、g=9.8(定数)
この条件で計算すると、60km/hの場合で4.06°のバンク角(路面カント角)となる。50km/h(13.89 m/s)の場合はθ=2.82°となる。ここの事故現場の設計速度は50~60km/hと考えられるため、路面カント角は3~4°程度であったと見てよいだろう。

計算式から分かるが、二輪車が45°のバンク角でコーナリングする場合、tan θ=1となるため、旋回中横にかかる遠心力(求心加速度)と垂直にかかる重力加速度が等しくなり、ともに1Gとなる。質量200kgfの二輪車なら外方向に200kgf相当の遠心力を受けてバランスを保っていることになる。わかりやすく例示すると、二輪車のバンク角を45°とすると、tan θ=1 であるため「ν²/g γ=1」となる。したがって、二輪車の速度が60 km/h (16.6 m/s)の場合の旋回半径γは、ν²/g=(16.6×16.6)÷ 9.8 = 28.1m となる。つまり、60 km/hで半径28mのコーナーを旋回すると1Gの遠心力を受ける。

この1Gの遠心力で静的な滑り出し限界点(最大摩擦力)と等しくなる場合が摩擦系数μ=1である。ただし、路面摩擦系数μ=1.0という公道はおそらく存在しない。晴天時に条件が良い舗装路でμ=0.7~0.8である。論理的には、条件が良い舗装路でも45°のバンク角で旋回すると、遠心力がタイヤのグリップ限界を越えて横滑りすることになる。いわゆるドリフト状態であるが、ほとんどの場合は転倒することになる。

●右に35 ~40°バンクした白バイの軌跡を推定
60km/hで衝突したとされる白バイは、回避旋回する前は、直線路と同等に路面に対してほぼ垂直で走行してきたと考えられる。その垂直状態から右へ35 ~40°バンクするとどういう軌跡を描くことになるか。

白バイ隊員の運転技量を考慮すれば、路面摩擦系数μ=0.7~0.8に対応する最大求心加速度が0.75G程度となる急旋回で回避しようとしたと考えられる。、前述の計算式(tan θ=ν2 /g γ)から、0.75Gの求心加速度とすると、tan θ= 0.754 = 37°のバンク角が限界となる。このバンク角は破損部の痕跡から推定した白バイの動的バンク角35 ~40°と合致するのである。

白バイの旋回進路計算

白バイが37°のバンク角で定常旋回した場合、tan θ= 0.754 であるから前項の計算式はν²/g γ= 0.754 となり、白バイの速度が60 km/h (16.6 m/s)の旋回半径γは、ν²/ 0.754g =(16.6 ×16.6)÷(9.8 × 0.754)= 37.3 m となる。

●白バイがどれだけ進路を逸れたか
同僚白バイ隊員の目撃証言から、衝突した白バイは衝突の約1 秒前に、明確にバンク姿勢になっていることが目撃され、右方へ緊急回避していたとされている。衝突した白バイが60 km/h (16.6 m/s)で走行してきたとすれば、バスの手前L₂ メートル手前のP₁ 地点で旋回を始め、37.3 m の半径でL₁ メートル(16.6 m)進行して右傾状態でP₂ 地点にてバスに衝突したことになる。これらの条件から、次のように白バイの進路逸脱量が計算できる。

白バイの進路計算:
●旋回円周長L = 2 πγ= 2 π× 37.3 ≒ 234 m
●白バイが進んだ円周(円弧)長L₁ =16.6 m(60 km/h 時の秒速=定数)
●白バイが回避中に旋回した角度θ ₂ = (L₁ / L) × 360 ≒ 25.5°
●白バイの旋回開始地点P₁とバスまでの距離L₂ =γ sin θ ₂ =16.1 (m)
●白バイの直進進路から衝突地点P₂ までの逸脱量L₃ =γ- (γcos θ ₂) ≒ 3.6 (m)
右に35 ~40°バンクした白バイは、衝突するまでに進路が3.6メートル右に逸れる計算になる。

●実際は白バイの直進から2.9m逸れた右折車線で衝突
弁護側は上記の計算結果が書かれた意見書を裁判所に提出したが、それにO御用鑑定士が噛みついてきたらしい。「いくら白バイ隊員でも重い白バイでそんなに(速く)旋回できない」と。なるほど。3.6メートルも右に進路が逸れたら、白バイはバスに衝突することなくかすめ抜けて行く。さすがに鑑定士を名乗るだけのことはあるようだ。どこまで正しく理解しているのか疑わしいが(笑)

上記の計算は、瞬時にフルバンク姿勢になったと想定した計算であり、結果は論理上の最大値である。実際は、オートバイをバンクさせるときにロール慣性というものが存在し、このロール慣性のために直立からフルバンク姿勢になるまで若干の時間的な遅れが生じる。どの程度の遅れがあるかというのは、車両質量、重心位置、ライダーの技量などによって異なるため一概には言えない。ただ、訓練を積んだ白バイ隊員の運転技量を考慮すると、実際の進路逸脱量は計算値(最大値)の80%あたりが妥当であろう。すなわち、現実を考慮した計算結果は3.6m×0.8=2.9メートル程度に補正されるわけだ。

白バイの走行軌跡

この2.9メートルという数字は、白バイが衝突したとされる右車線からバスが停止したとされる右折車線の距離(上写真のA〜B間の距離)と一致する。白バイに付いた衝突の痕跡から導かれる計算でも、白バイの衝突地点は右車線(A)ではなく右折車線(B)であることが裏付けられるのだ。

さて、裁判官はこのロジックをどう判断する?O御用鑑定士もY御用鑑定士も、技術的に否定できていないのだが。

当方のブログに掲載された記事および図版の無断引用はご遠慮願います。


破損箇所のかみ合わせで事実が分かる

この記事は、御用鑑定の比較一覧のNo.4「白バイの衝突姿勢」と関連事項の解説である。
蔵出しシリーズも終盤に近づいた。細かなものを含めるとまだ公表すべきことが山ほどあるが、蔵出しシリーズでは重要な事項だけに絞ることにしている。

●鮮明な画像で事故状況が明らかに
以前は不鮮明な写真しかなく、どこがどう壊れているかさっぱり分からなかったが、精細な写真によって白バイの破損状況を詳しく調べることが可能になった。真実に迫るために非常に重要な事である。

●白バイのタンクは鋭利な部分で穴があいた
白バイが衝突したとき、燃料タンクに穴があいてガソリンが流出している。破損箇所を細かく見ると、左側アルミ合金製メインフレームにえぐられた深い傷があることがわかった。この傷ができた状況は、バスの鋭利な部分が白バイ側面に当たったと見られる。イグニッションコイル(A)が脱落し、次にABS 系の金属製ブレーキパイプ2 本(B)を剪断し、さらにメインフレーム左側上面にV字形に深く刻まれたえぐれ傷(C)を付け、最終的に燃料タンクを付き込んでガソリンを漏出させた穴(D)をあけたと見られる。燃料タンクにあいた穴の周囲がへこみ、タンクの下縁が上方へめくれ上り、塗料が剥がれて鉄板がむきだしになっている。
白バイ損傷1

左カウルが大破して脱落し、左側ラジエターはやや変形しているが、ほぼ元の取付け位置を保っている。ラジエターのリザーブタンクも大きな破損は見られない。

なお、フロントフォークが揃って真後ろに突き込まれておらず、左右フォークのインナーチューブが前後に曲がっていることが確認できる。ハンドルに大きな変形は見られないが、前輪とハンドルが直進に揃わなくなっている。この曲がり方は、前輪がまっすぐに物体に当たって突き込まれた状態ではなく、前輪が左右にねじられた状態を示す。これは、前輪がバスの車体下に潜り込んで白バイの車体に押されたため、左右フォークが互い違いにねじられたものと考えられる。

えぐれ傷の延長線をたどると、ブレーキパイプの剪断面とタンクの穴(A)がほぼ一直線に並ぶ。この傷の方向は、黄矢印で示したように、白バイの斜め前方からである。これが白バイがバスに衝突した角度である。科捜研や御用鑑定士が仮定するように、白バイが直立姿勢で衝突すれば、この角度で傷が付くことがない。このえぐれ傷の方向は、白バイがバスに対して斜め方向から衝突した証拠である。

白バイ突き込み方向

●えぐれ傷をつけた部分はサイドメンバー先端部
白バイのメインフレームが深くえぐられた傷(A)は、バス側の小さな面積の強度部分が当って生じたものと考えられる。形状としては彫刻刀のV字形の刃ような部分である。これに相当する部分は、バスのボディパネルの所で水平に折れ曲がった部分(B)の裏にある上側サイドメンバー(C)の前端部である。

白バイ損傷2.

水平に折れ曲がったボディパネルのライン(B)より高い側面部に白バイの車体部分が当たった形跡がない。これは、白バイが右に深くバンクした姿勢で衝突したことをものがたっている。

右フロントピラー(D)下端部が突き込まれてサイドメンバー(C)前端部との接合部で急に折れ曲がり、その接合部がフロントピラー(D)との接合部から剥がれている。えぐり傷を付けたバス側の構造部は、サイドメンバー(C)前端の角部(E)が一致する。フロントピラーは薄い鋼板を貼り合わせた構造で大した強度はないが、サイドメンバーは頑丈な鋼材製であり、そのエッジ部分の高さ、強度、形状などが白バイ側のえぐり傷に符合する。

白バイ損傷3

右フロントピラーの塗料が剥げた部分(F)は、白バイのフレームと強くこすれたものと考えられ、えぐれ傷がついた状況をよく物語っている。他の部分で傷がついた可能性がないか、修復されたバスの車体下から観察しても、サイドメンバー(C)前端の角部(E)以外にフレームにえぐり傷を付けられるような部分は見当たらない。

一般的な乗用車は薄い鋼板を組み合わせたボックス形状で強度を稼ぐモノコック構造だが、バスの車体構成は古典的なシャシー&ボディ構成である。これは、車体の骨格ともいえるシャシーに外皮となるボディを乗せた構造である。車が受けるさまざまな応力はシャシー部位が支えるが、サイドメンバーはボディを裏から支える肋骨のような役目である。衝突部分にある強度部位はこれ以外にない。

●バスの車体下構造と修理箇所から鑑定士のウソが分かる

弁護側は、修理されたバスを隅々まで観察し、実際に走らせて検証作業を積み重ねている。しかし、2名の御用鑑定士は、いずれもバスの実車を見もせずに、写真と公式な書類だけ見て薄っぺらな鑑定書を書いている。この差が、御用鑑定士のウソを曝くために役立っている。下の写真は修理されたバスの下部構造である。

バス車体下構造

バスの左ボディパネル裏側に強度メンバー(サイドメンバー)が上下2 本あり、上側サイドメンバー(A)は鋼鉄製角材で強度が高く、下側サイドメンバー(C)は鋼板プレス製で強度は高くない。上側サイドメンバー(A)は、より強度が高いサイドフレーム(B)に結合されている。下側サイドメンバー(C)はボディ外板の下端付近にあり、ウォッシャータンク(D)などの軽い部品が取り付けられている。

サイドフレーム(B)とフロアパネル(E)に修理を要する大きな損傷を受けていた。エアタンク(F)に交換を要する損傷はなかったが、関連部品の交換やサイドフレーム等の修正作業のためにエアタンクが取り外されている。

運転席の足下にあるステアリングギヤボックス(G)やピットマンアーム(H)、ステアリングロッド(I)など基本構成部品の修理・交換は行われていないがステアリング機構の油圧パイプを交換している。これらの修理状況から、白バイが衝突した際の衝撃エネルギーの多くは上側サイドメンバー(A)が受けていたことがわかる。

O鑑定書には「構造強度の強いフレーム(構造材)の変形・破損は写真で見る限り観察されない」と書かれていた。しかし、バスの修理見積書から、サイドメンバーを支えるサイドフレームとフロアパネルに修理を要する大きな損傷を受けていた事実が明らかになっている。つまり、サイドメンバーが衝突の一次衝撃によって突き込まれ、この周辺部のボディパーツに大きなダメージを受けたということである。

白バイの傷から衝突地点が明らかにされる。次回記事に乞うご期待。


当方のブログに掲載された記事および図版の無断引用はご遠慮願います。

運動量保存則の正体(2)

前回の記事「運動量保存則の正体(1)」の続き。この記事は、御用鑑定の比較一覧のNo.16「衝突地点を特定する根拠」と関連事項の解説である。

Y鑑定とは、弁護側の意見書への反論として高知地検が御用鑑定士Yに照会した回答書のこと。科捜研算定書によると白バイが右にバンクしながら直進したことになり、物理的に矛盾すると弁護団側から指摘され、論理破綻した。地検は反論するために専門家に依頼するとしていたが、実は反論ではなく論理補充するために、部分的な鑑定をY鑑定士に依頼した。高知地検は、それだけ危機意識を持っていると言える。なお、警察向けの機関誌「月刊交通」の常連執筆者であるY鑑定士は、月刊交通2011年1月号に高知白バイ事件を取り上げている。そういう経歴の持ち主の鑑定である。

●科捜研算定書を否定したY鑑定
Y御用鑑定のポイントは、科捜研が白バイの後輪のタイヤ痕としていた痕跡を「実は前輪のタイヤ痕だった」と否定していることだ。科捜研算定書を差し換えるにしても、基本的なところを差し換えるとは、なんとも大胆な鑑定といえる。

科捜研算定書のとおり、後輪のタイヤ痕だとすると、白バイが右に深くバンクした姿勢で衝突したことになり、右車線で衝突したことにならないと指摘してきた。Y鑑定では、その指摘をごまかすために、「実は前輪のタイヤ痕とだった」かつ「白バイは直立姿勢で衝突した」と言い張り、原審で証拠とされた科捜研の算定書の内容を根本から修正しているのである。矛盾だらけの科捜研算定書を差し換える目的が、Y鑑定で科捜研算定書がでっち上げだったと認めたことになる。ズバリ言えば、警察を支援するつもりで誤爆したようなもの(笑)弁護団にとっては大きな意義があるだろう。

しかし、Y鑑定が事実を書いているかと言えばそんなことはない。警察・検察側は、後輪と言ったり前輪と言ったり、痕跡の認識が全く違っているにもかかわらず、運動量保存則という計算方法によって似た結果が出されている。欲しい数値を得るために、テキトーな御託を並べる胡散臭さについては「どっちもどっち」なのである。事実をねじ曲げようとすると、いたるところに綻びが出る訳だ。

●科捜研算定書とY鑑定の図面はウソだらけ
科捜研算定書とY鑑定回答書に掲載されている図面を当委員会で作図して比較検証してみた。左が科捜研、右がY鑑定の図面をベースにしている。いずれも停止地点のバスを基準にして「進路変更前のバス」を赤い破線で描いている。手間をかけて作図検証することで、科捜研とY鑑定のデタラメさが詳しく把握できた。
科捜研でっち上げ図面の検証
車体位置を1 m前にずらして描いた科捜研の図面。衝突時の車体は青線の位置になり、そのタイヤ位置は(b)になる。スリップ痕の始まりそうな位置に合わせて車体を配置したでっち上げ図面といえる。

まず、科捜研算定書の図面上のウソを曝くと、同書図7〜図9に衝突時の前輪位置(a)が不自然な位置に描かれていることだ。衝突点(黄色矢印)はバスの前端部であるため、衝突時の前輪は位置(a)ではなく、そこから1 mほど後ろの位置(b)にあるはずだ(前輪接地点から車体前端までのフロントオーバーハングは1.82m)。つまり、衝突してからバスが約1 m(c)直進し、そこから左回りに進路が変わったと図面に書かれている。

なぜバスが1 mほど直進した位置から進路が変わったのか明確な説明がない。図面に「最大押し込み時」と注釈が付けられていることから推測すると、衝突後衝撃の吸収が終わった時点(バスが動かされる寸前)の位置を示しているように思える。しかし、衝突時の最大減速度を40〜70Gとすると、60 km/hの白バイが衝突して速度が0になる押し込み時間を求めると0.025〜0.040秒*程度になる。バスの速度が10 km/hとすると、その時間で0.07〜0.11 m程度しか前進しないことになる。衝突後、1 mも前進してから急に進路が変わるわけがないのだ。

おそらく、左前輪をスリップ痕の始まりそうな位置(a)に合わせて作画したのだろう。当然だが、そこでタイヤが進路変更した痕跡はなく、Y鑑定がいう「1.5 mスリップ痕」でもないのである。たとえ「1.5 mスリップ痕」だとしても痕跡の向きがまるで違う。

さらに(a)の位置から停止したタイヤの位置(d)を結ぶ線と、バスの車体左側面を示す仮想線の成す角度(e)を15°としている。そもそも(a)が任意の(でたらめな)位置であるし、バスの車体左側面を示す輪郭線はあくまでも仮想線である。1°単位を求めるためには、極めて粗雑な話であり、作図しても不正確になる。実際、図で15°と書いているところの角度は13°ぐらいにしかならない。

前の記事で指摘しているが、図面の線を写真に重ねても位置関係が全く合わないことでもデタラメさがわかる。これらから、お粗末すぎる図面というより、悪質なでっち上げ図面と断ずるほかない。

●根拠がなく間違いだらけのY鑑定
Y鑑定の間違い
衝突地点とタイヤ接地点は平面上で重ならない。
Y鑑定の方は、 白バイの前輪タイヤ痕(A)を衝突点としてバスの車体輪郭線の角を重ねている。タイヤ接地点とタイヤ前端で当たる点は、上から見て決して同じ位置にならないが、重ねて描く失敗をしている。こういうところが散見されると、全体としての信用性が失われる。

不可解なのは、衝突点(黄色矢印)からの延長線と車体中心線の成す角度を比較している点だ。進路が変わった角度を示すために、衝突の方向を基準にするのはおかしい。車体中心線を基準とした変化で比較すべきである。また、進路がずれた角度を科捜研の式ではsinθとしているのに、なぜかY鑑定の式ではcosθとしている。これらは「目くらまし」のつもりだろうか(笑)
御用鑑定でっち上げ図面の検証
車体角度の根拠が無く、1点を軸にどのような角度にも描けるY鑑定の図面。速度に対して短すぎる空走距離(D)も論理破綻している。Y鑑定は白バイの押し込み時間を無視している。

細かく言えば、Y鑑定も科捜研もリヤアクスルを中心として車体が回転しているように作図しているが、これは誤りで自動車の進路変化を数値化するには、車体重心点を中心にした車体中心線の角度的な変化(ヨー運動)で表すべきである。車体の重心点に向かってまっすぐ力が加わった場合、車体を回す力ヨーモーメントが発生しないことを考えれば分かることである。自動車の運動を説明するには、重心点を通るXYZという3軸を中心とした回転運動で評価すべきだが、基本的な作法を守らないなど、ちょっとお話にならないなという印象である。

Y鑑定の図面で致命的にデタラメな点は、タイヤ痕(A)をバスの角に合わせているが、そのバス車体角度(B)が任意の(でたらめな)位置である点だ。タイヤ痕(A)の一点だけを合わせても、車体角度はどのような角度(C)にも描ける。Y鑑定でも、バス車体角度が(B)であるべき根拠を示さず「バスの飛び出し角度82度」となるようにバスを配置したでっち上げ図面といえる。当然だが、バスは停止していたため進路が変わる前の痕跡なぞあるはずがない。きちんと説明できる根拠が無いため、必然的にでっち上げになるわけである。

さらに、Y鑑定の図では衝突時の左前輪の位置と「1.5 mスリップ痕」の始まり位置の距離(D)が1.0 mほどにしかならないことが分かる。2.0 mのスリップ痕とすると、距離(D)は0.5mになる。この距離は運転手が衝撃を感じてからブレーキがかかるまでの空走距離に相当する。「1.5 mスリップ痕」から計算されるバスの制動初速度4.5 m/s(16.2 km/h)に一般的な反応時間0.75秒を乗算すれば空走距離は3.4 mになる。つまり、空走距離1 mの場合の反応時間は約0.2秒となるが、あのアイルトン・セナでも不可能な反射神経の持ち主でないと成立しないことになる。多少バスの車体角度を変えても、この空走距離の辻褄が合うことはない。
つまり、タイヤ痕(A)は白バイが衝突したタイヤ痕ではないという結論になる。

さらに重箱の隅をつつけば、Y鑑定で白バイの燃料タンクがつぶれていることを乗員の身体が当たったとして計算に反映しているが、実際は燃料タンクは乗員が当たってつぶれた形跡はない。計算結果への影響は大きくないが、無いことを有るとするのは不正確という印象を持たざるをえない。
科捜研算定書とY鑑定は、同じ現場状況からこれほど違うスジ書きに仕立てることができるのだ。くどく書いたが、運動量保存則に放り込む数値がいかに根拠が無いデタラメなものかおわかりいただけたと思う。

といいながら、またもや百歩譲って、でっちあげた「バスの飛び出し角度82度」を是として認めても、計算結果はどのようにも操作できる。以下にその例を示してみる。

●計算結果を自在に変えられる運動量保存則
Y鑑定士は根拠もなく都合のよい数値を引き出している。警察が1.2 mとしたスリップ痕を「スリップの長さをL=1.5 mとする」として、根拠を示さず勝手に決めている。言うまでもなく、都合がいい数値で計算するためであるが、弁護側が比較写真で示したように、延長されたスリップの長さは2.0 mで描かれている。
事実をねじ曲げる欺しのテクニック

スリップ痕を1.5 mとした場合と2.0 mとした場合、運動量保存則の計算結果がどう変化するか計算してみた。まず、変わるのがバスの速度となる制動初速度である。既知の公式から制動初速度を求めると、1.5 mの場合4.5 m/s(16 km/h)に対し、2.0 mの場合は5.2 m/s(19 km/h)となる。

この数値で注意すべき点は、白バイの引きずり抵抗を無視していることである。前述のように、白バイの引きずり抵抗を含む合成摩擦係数μ=1.2として計算すれば、制動初速度は6.9 m/s(25 km/h)となる。Y鑑定士が使った運動量保存則の計算式そのままで、これらの制動初速度と路面値摩擦係数の条件だけ差し換えた計算結果は下表のようになる。表の一番上の行はY鑑定のオリジナル数値である。
スリップ痕長 (m)路面摩擦系数 (μ)バスの制動初速度 (m/s)白バイの速度 (km/h)
1.50.74.570.0
2.00.75.280.9
2.01.26.9107.4

この結果からわかるように、スリップ痕は短く、バスの制動初速度を低く見積り、白バイの引きずり抵抗を無視したい事情があることがわかる。だが、スリップ痕が右に曲がっているのは、白バイを挟み込んだ抵抗によるものと警察が公言している。質量9トン近いバスのスリップ痕が曲がるほどの引きずり抵抗を無視することは不当な作為になる。したがって、撮影された2.0 mのスリップ痕と白バイの引きずり抵抗を考慮すると、白バイの衝突速度は80〜110 km/hほどになるという計算結果になる。

上記で差し換えた数字は、科捜研算定書やY鑑定のような根拠のないでっち上げ数字ではなく、ちゃんとした根拠に基づく修正すべき数値である。これは便利な計算式だ(笑)

描かれたスリップ痕の長さが2 mだったことを示す写真を突きつけられても、検察がその事実を受け入れないのはこういう事情がある。また、路面に擦過痕がありながら、白バイの引きずり抵抗の影響も認める訳にはいかない。運動量保存則を逆手にとれば、白バイが暴走してきたことが「証明」されるからである。
以上から分かるように、科捜研も御用鑑定士も痕跡から積み上げた計算結果ではなく、欲しい計算結果に合わせて数値を決め、それに合わせて図面を描いている手口が明らかになった。まさに「ゴミを入れたら出てくるのはゴミ」そのものだろう。すなわち、参考にもならないどころか、でっち上げに便利なツールと切り捨ててもよい。
これが運動量保存則の正体である

手みじかにと思いながらくどくなってしまった。それほど、突っ込みどころ満載の鑑定ということだ。

*:等加速度運動式[a=(V-v0)/t]から。加速度 a、 t秒後の速度V、初速度v0、経過時間 t

この記事および図版は自前でした。無断転載歓迎です(笑)


Appendix

国民が司法を審判しよう

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プロフィール

監視委員長

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職業:元自動車メーカー社員で、バイクや自動車の取り扱いや技術に詳しいらしい
資格:自動車整備士資格があるらしい
趣味:写真を撮るのが得意らしい
特技:若い頃にバイクのレースに出てたらしい

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